冷めたスープをかきまわしても魔法はおこらない
「―――…しまった、かなぁ。」
友人の初から電話が掛かってきてから丸一日経過した。
そもそもあの電話は向こうから掛けてきたもので、それが何故どのようにして通じたのかは分からない。
ひいてはこちらから掛け返したところで繋がる確証は無いのである。
最初に辿り着いた街、スティルフといったか、そこで聞いた話に従って「屋台から逃げた林檎を討伐」して一段落ついたところで、感想でも話し合っているらしい旅の道連れから視認出来る程度の距離を取った。
携帯電話の充電はこの世界に来た時のまま、1つ欠けた状態で保たれている。
「イベントこなしてなんかフラグ立つかなあと思ったけど…
そんなに甘くないか。」
「まあ、無茶して探索進めるような面子じゃなさそうだし。焦らずってとこか?」
「…にしてもここに来てから地味に日数経ってるよなぁ。
俺、向こうじゃ行方不明なのかな?」
独りごちてヘッドホンを外し、持ち前の楽観思考でとりあえず電話を掛けてみる。
ちなみになんとなく装着したままだったヘッドホンは例の携帯音楽プレイヤーに繋がっているが、
このところは何か聴いている場合でもなかった。気を紛らわすには効果覿面だろうけれど。
「(――プツ) …おーぎんが、いきてるな?」
「お、繋がった…繋がって早々物騒な、やめてくれよ。
結構必死なんだよまじで。」
「それで、どした?」
「ああ、その、こっちはとりあえず無事で、
情報とか街とか探してるんだけどさ。
…具体的には数えてないけど何日か経ってるし、
このまま行方不明じゃまずいかなって思って。」
「……あー…そーさくねがいとか、だされるかもってことな?」
「まあ、丁度休み入るとこだったしそんな大事には
ならないかもだけど。念のため…」
「ぎんが、あのな?」
「ん?」
「さいしょのでんわ、してから、いまこのでんわまで、
10ぷんくらいしかたってない。」
「……………」
「…へっ!!?」
もともと、はっかがくるまで、おれとぎんがここでまつはずだったな?」
「さきにひるめし、くうからちょっとはやくきたな?
で、おれはいま、はっかになんていうかかんがえながら、
メニューみてたとこな。」
「う、うそだろ…だって俺、少なくとも2日…いや3日は
…あれ?だって夜が来て休んで…」
「……あれだな?そーさくねがいのしんぱい、
とうめんは、ないな。よかったな?」
「え、えええええええ??」
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