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冷めたスープをかきまわしても魔法はおこらない
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 「で、あらためて、…なにかわかったか?」


この友人、斧鉈初は語り口こそ一本調子で感情の起伏を読み取りづらいがその実冷静だ。
楽観的ではあるが何かと慌ただしい自分からすれば、しれっと本題に引き戻される事も有難かった。
席を取ったのだろう、電話口からはファストフード店内のざわめきが僅かに漏れ聞こえる。





 「あ、そうだ。一応話は聞いてみたよ。」


 「ここはセルフォリーフって場所で、スティルフって町。
  今はちょっと離れて周りを歩き回ってるけど…山とか森とか、大自然って感じ。」


 「…セルフォリーフ。」


鸚鵡返しに呟いたのち、周囲の雑音よりも間近で物音が聞こえた。
トレーを置いたか何かしたのだろうと頭の隅で結論づけて、情報の伝達を続ける。



 
 「そのスティルフって町に住んでる人と、わざわざ自分達の意思で
  ここに来たって人が同じ事言ってたから、そうなんだと思う。」


 「セルフォリーフはたくさんある分割世界の一つだ…って言ってたけど…」


聞いて覚えている事をそのまま口に出してみると、生きる術たるカードゲームのルールを覚える事に必死で
あまり考察も情報の整理もしていなかった事実を思い知る。
今主に行動を共にしている新体操みたいな衣装を纏う少女もまた、状況は自分と大差無い様で
主な情報源は食糧を譲ってくれる商人や、オーバーテクノロジーを連れる少女だ。



 「……ぶんかつせかい。」


 「い、言っとくけど自作じゃないからな!断じて!
  映画でも漫画でもゲームでも聞いたことないし、それに…」



 「その、じぶんのいしでセルフォリーフにきたってやつは、
  ぶんかつせかいをいききできてるってことな?」


 
 「え、あー…うん、そういう事みたいだ。でも、全員じゃないよ。
  俺と一緒で何だかわかんないうちにここに居たって言う人もいるし。」


 (ていうか、まだその辺しっかり話聞けてないしな…)

 
 「つまり、“もとのせかい”も、ぶんかつせかいのひとつってことな。
  ぎんががいるそこも、おれがいるここも。 …それか、」


 
 「ひとくくりのせかいが、さいぶんかされてぶんかつせかいってよばれて、
  “ここ”と“そっち”じゃくくりがちがうとかな?」


 「後者だろうな。とりあえずぐぐっても何も引っ掛からない。」


 「えっと…?じゃあ、でっかい世界のくくりが違う俺やヴァールさんは
  事故みたいにくくりを超えちゃったから戻るに戻れない…」


 「―――…ちょ、え?」


一対一で間違いなかった筈の電話口から、明らかに初と違う声が入った。
それは周囲の客の声にしては近く、明瞭にこちらの耳に届いて俺は思わず一度耳を離して画面を確かめた。



 「ドライブモードな。きにするな。」


 「まあ続けろ。お前のとっ散らかった説明を整理してやるんだ、
  感謝するんだな。」


 「……な、な、なんだよもおお!いつから居たんだよ!!?」



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